持続可能な食を実現するための新たな共同研究の始まり
三菱食品株式会社と株式会社三菱総合研究所(MRI)は、食料サプライチェーンにおける生活者の行動変容を促進するための共同研究を始めました。この取り組みは、持続可能な食の実現を目指すものであり、両社がこれまでの知見や研究成果を整理して公表したことがきっかけとなっています。
背景
昨今、気候変動の影響や生態系の劣化により、食料供給の安定性が脅かされています。特に日本では葉物野菜や魚介類、さらには米の供給にも影響が出るようになりました。これらの問題の要因の一つとして気候変動が挙げられていますが、食品を供給するサプライチェーン自体も環境課題の一因とされています。
2021年に開催された国連食料システムサミットでは、食料システムが温室効果ガスの排出や生物多様性の喪失に大きな影響を与えることが指摘され、持続可能な生産システムが必要であると強調されました。
しかし、持続可能な食品を生産するサプライヤーがしっかりとしたビジネス上の利点を得られているとは限りません。これは、生活者が環境に対する意識を持ちつつも、その価値を実感していないことが一因とされています。持続可能な食を実現し、安定した供給を持続するためには、生活者がこの価値を認識し、購買行動を変えていくことが不可欠です。
生活者の行動変容に向けた3つのポイント
三菱食品とMRIは、生活者行動の変化を促す上で重要な3つのポイントを明らかにしました。
1. 消費と生産の分断の克服
日本において、消費者は食品や農業に対する意識が低下しており、その根本には消費と供給が乖離しているという問題があります。これを解消することが、持続可能な食の実現へとつながると考えています。
2. 生活者のメリットを重視
生活者が意識的に食や農に興味を持つようになるためには、おいしさや楽しさ、さらには経済的メリットを重視することがカギになります。私たちが抱える社会課題や環境問題に興味を持ってもらうためには、まず魅力を感じてもらうことが必要です。
3. 体験を重視したアプローチ
従来の啓発型ではなく、生活者自身が感じるメリットを起点にした体験型のアプローチが効果的です。消費者が「食や農にこだわりを持つ」ことで、具体的な行動へとつなげるための手助けが必要です。
今後の展望
今後、三菱食品とMRIは、持続可能な食の実現に向けて研究を進め、次の3つの仮説を検証する予定です。
1. 体験や実践を積むことによるアプローチの具体化
2. 施策が環境に配慮した購買行動に与える影響の分析
3. 施策が事業者の売上やブランディングに与える効果の評価
これらの研究結果をもとに、食品流通業界の関係者と連携し、具体的な施策を検討していく考えです。持続可能な食を実現するための足がかりとして、それぞれの取り組みが展開されることを期待しています。