社会課題に配慮した食の市場を見据えた消費者の意識変化とは

近年、私たちの食に対する意識が大きく変わりつつあります。特に、社会課題に配慮した食というテーマが注目を集めています。2024年6月に改正される食料・農業・農村基本法により、環境との調和が新たな基本理念として位置づけられることから、社会的意義を持つ食材や製品への関心はますます高まることでしょう。ここでは、株式会社日本総合研究所の実施した10,000人を対象とした調査から見えてきた、社会課題に配慮した食の市場の実態と、消費者の意識について詳しく探っていきます。

調査の背景

現在、私たちの食の選択には、単なる味や価格だけでなく、環境や社会への影響が大きな要素として関わってきています。調査によると、SDGs（持続可能な開発目標）への関心が高まる中、環境問題や食品ロス、人権問題などに配慮したエシカル消費への期待が高まった結果、社会課題に配慮した食に対する意識が向上しています。この流れを受けて、各事業者も持続可能な食料システムの構築が求められてきています。

調査概要

本調査は、全国の18〜69歳の男女を対象に、2024年の12月20日から26日まで実施され、10,000名からの回答が得られました。調査項目としては、普段の食に対する興味や選択基準、さらには社会課題に配慮した食に対する置換意向や追加支払い意向が含まれています。特に、日本の食料自給率向上や食品ロス削減、環境配慮、労働問題、アニマルウェルフェアに対する消費者意識がどう変化しているのかを探ります。

付加価値の試算

調査の結果、社会課題に配慮した食を選ぶ意向を持つ人々が多く存在することが判明しました。具体的には、味や価格の変化が無い場合、40〜50％の人々が普段の食事を置き換える意向を示し、50％以上の人が実際に置き換えると回答しました。また、置き換えた場合の価格上昇に関しても、5〜20％程度の値上げを許容する意向を示す回答が半数を超えました。これは、社会課題に配慮した食が約1兆円の市場規模をもたらす可能性があることを示しています。

生活者セグメントの分析

調査では生活者をいくつかのセグメントに分類し、それぞれの特徴を明らかにしました。たとえば、豊かな生活をしている家庭の主婦層やトレンド意識の高い若者層が顕著なニーズを示す一方で、忙しい生活を送る働き盛りの男性や低関心層も存在することが分かりました。特に、食に対する関心が著しい層は「食は生活の要層」と「食でも自己表現層」に分かれ、それぞれのセグメントが社会課題に配慮した食に価値を求める姿勢が見られます。これらの層はある程度味が劣っても置換しようとする姿勢が強く、フードチェーン全体にとって大変重要なターゲット層です。

持続可能な食料システムに向けて

これらの調査結果から読み取れるのは、社会課題に配慮した食の需要が高まっているということです。このニーズは、持続可能な食料システムの構築に向けた投資の有効性を示唆しています。特に、5〜20％の値上げを許容できるということは、事業者にとっては十分な利益を生み出す可能性があることを意味しています。企業は今後、このニーズを市場に求められる形で反映させる必要があります。

最後に

社会課題に配慮した食は、単なるトレンドではなく、これからの食市場においてその重要性を増していくことが予想されます。このテーマに基づいて事業を展開することは、持続可能な未来を築くための大きな一歩に繋がるでしょう。私たちもまた、食を通じて自らの価値観を振り返る機会を持ち、次世代に繋がる持続可能な選択をしていくことが求められています。