災害時のペット同室避難を実現するために求められる獣医師の役割
最近、関東・東京合同地区獣医師大会の災害動物支援セクションにおいて、歌手の伍代夏子氏が基調講演を行いました。彼女は、災害時にペットと飼い主が一緒に避難できる環境を整えるための「りく・なつ同室避難推進プロジェクト」について話し、獣医師への支援を訴えかけました。
プロジェクトの背景
伍代氏は、プロジェクトの発端として、東日本大震災での経験を挙げました。当時、若い女性がゴールデンレトリバーを連れて避難所に入れず、外で過ごさざるを得なかった場面を目撃し、ペットと飼い主が共に避難できない現実に心を痛めたのです。避難所にペットを連れて行くことができないために、再度の震災に遭遇してしまう悲しい事例があることも明らかにされました。
「ペットと一緒に避難できる社会が実現すれば、飼い主も安心して避難できると考えています」と伍代氏は強調し、同室避難の重要性を伝えました。さらに、石川県での獣医師たちの連携によるペット一時預かりの成功事例も紹介し、地域でも少しずつ変化が起きていることを伝えました。
現状の課題
しかしながら、人口密集地域においては、避難所でのペット受け入れの余力が不足しているという現実もあります。「スペースの確保や、飼い主への教育が課題です」と伍代氏は指摘し、飼い主たちに対しては、「最低限のしつけやワクチン接種、避難用品の備蓄が必要です」と呼びかけました。これにより、獣医師たちには飼い主へのサポートが求められるのです。
クロストークセッションの実施
同大会では、山梨県獣医師会副会長の浅山光一氏が避難所に関するアンケート結果を発表しました。市町村でペット同伴可能な避難所が増えている一方、飼い主の意識や知識の不足が依然として課題であることが明らかになりました。
また、群馬県獣医師会の小此木正樹氏が発表した事例も印象的で、災害医療訓練にVMAT(災害動物医療支援チーム)が参加し、ペットを連れた患者に適切に対応するための訓練が行われています。こうした先進的な取り組みは、他の地域にとっても参考になるでしょう。
獣医師の重要性
トークセッションでは、獣医師が防災担当者と連携を強化し、災害時にペットと飼い主をサポートすることの重要性が何度も強調されました。平井潤子氏や藤本順介氏が、それぞれの専門知識を使い、獣医師が地域にペット同伴可能な避難所の情報を提供することを促進する必要があると訴えました。
まとめ
最終的に、伍代氏は「獣医師の皆様に、より一層のお力添えをお願いしたい」と強くメッセージを送ります。災害時にペットを守るためには、獣医師の支援と飼い主の準備が不可欠です。私たちが求めるのは、安心して共に避難できる社会の実現です。このプロジェクトに向けて、今後もさらなる行動が期待されます。
開催概要
- - 催事名:令和7年度関東・東京合同地区獣医師大会
- - 日時:2025年9月7日(日) 14:30〜16:30
- - 開催場所:アピオ甲府タワー館10階 慶翔の間
- - 出席者:伍代夏子氏(アンバサダー)、平井潤子氏(NPO法人ANICE理事長)、藤本順介氏(東京都獣医師会VMAT)
- - 主催:公益社団法人 山梨県獣医師会