三島由紀夫生誕100年の舞台『M』の魅力
2025年、三島由紀夫の生誕100年を迎えるにあたり、東京バレエ団が再演するバレエ『M』。この作品は、20世紀の巨匠モーリス・ベジャールの手によって創作され、三島由紀夫の芸術家としての姿を鮮やかに描き出します。本記事ではその魅力をご紹介しましょう。
圧倒的な美の舞台『M』
『M』は、三島の代表作に込められたエッセンスをバレエという形で視覚化する、非常にユニークな作品です。海の音に包まれ、三島の祖母に手を引かれた少年の姿から始まり、女性ダンサーたちの美しい踊りによって観客は一瞬にして三島ワールドに引き込まれます。そして、東京バレエ団の実力派ダンサーたちによる力強い踊りが続き、約100分にわたって息をつかせない濃密な時間が展開されます。
三島の人生を象徴する『M』
作品のタイトル『M』には、三島の名前が含まれるだけでなく、「海(Mer)」「変容(Métamorphose)」「死(Mort)」「神秘(Mystère)」「神話(Mythologie)」の5つのテーマが織り込まれています。これにより、彼の複雑な人生が象徴的に表現されています。また、ベジャールも作品に寄せられた思いを大切にしつつ、三島に捧げる形で再演が決まったことからも、その意義深さが伝わります。
国内外での評価と期待
『M』は国内だけでなく、パリ・オペラ座やミラノ・スカラ座、ベルリン・ドイツ・オペラなど国際的な舞台でも上演を重ね、高評価を得てきました。五感を刺激するこの作品が、三島生誕100年という節目に再演されることは、観客にとっても大きな意味があるでしょう。
迫力満点の男性ダンサーたち
東京バレエ団の強みは、男性ダンサーの力強さです。特に“武士道”の場面では、4名の男性ダンサーが三島の分身として力強い振付を踊り抜きます。彼らのパフォーマンスは、観客の心を強く掴み、全編を通して一体感が保たれることでしょう。また、聖セバスチャン役には樋口祐輝と大塚卓がダブルキャストで出演し、作品にさらに深い味わいを与えています。
湧き上がる熱気と稽古風景
最近行われた公開リハーサルでは、バレエ団の主力メンバーたちが圧巻のパフォーマンスを披露し、稽古場は熱気で満ち溢れていました。細部にまでこだわった演出が印象的で、佐野志織芸術監督が女性ダンサーたちの指導を行う様子は見ものです。
音楽の多様な魅力
作品の魅力の一つは、黛敏郎が作曲したオリジナル楽曲と、ドビュッシーやワーグナーなど多彩な音楽が融合している点です。名ピアニスト菊池洋子の演奏によって、さらに作品は盛り上がること間違いありません。近年の経験を生かした彼女の音色に期待が高まります。
まとめ
三島由紀夫の生誕100年記念に、彼の魅力を再確認できる舞台『M』がいよいよ再演されます。芸術に触れることで、多くの観客が三島の名を再評価し、彼の作品や思想を感じ取ってほしいと思います。美しい振付と圧倒的な音楽が交錯する『M』は、アートを愛するすべての人々にとって、特別な経験となることでしょう。