はじめに
近年、気候変動の影響が水産業にも大きな足跡を残しています。特に、サーモンの養殖業では、温暖化に伴う水温の上昇が大きな課題となっており、これに対応するための新しい技術が求められています。そんな中、株式会社Smoltと株式会社ベルデアクアという2つの水産スタートアップが手を組み、次世代型サーモン養殖の実証試験に取り組み始めました。この試験は、高温耐性のサクラマス種苗と、電気分解式のろ過システムを組み合わせたものです。
サーモン養殖の現状と課題
サーモン養殖は、世界中で広く行われていますが、海面養殖に依存した従来の方法では、温度条件や地域的な要因に制約を受けやすいのが現状です。例えば、温暖な水温では生育が難しく、低水温下でのろ過効率も低下し、装置の大型化が必要になるなどの課題が山積しています。また、閉鎖循環式陸上養殖(RAS)においては、ろ過槽で発生するジオスミンなどのオフフレーバー問題が品質を低下させる要因となっています。
共同試験の内容
今回の共同実証試験の特徴は、Smoltが開発した高温耐性のサクラマス種苗を、ベルデアクアの電気分解式ろ過システムに導入する点です。この新しいシステムにより、通常の温度帯を超えても成長できるサクラマスと、低水温でも安定して機能する水質管理技術を組み合わせ、サーモン養殖における新たな可能性を模索します。
試験では、成長速度や飼料効率、肉質や味の評価を行いながら、安定した生産と品質の両立を図ることを目標にしています。これによって、従来の季節的・地域的な制約を超えた新しい養殖モデルの検証が期待されています。
疑問を持つ各社の技術
Smoltのサクラマス
株式会社Smoltが開発した高温耐性サクラマスは、選抜育種を重ねた結果、20℃前後の高水温でも成長することが可能になりました。この育種技術により、生産地域の拡大や安定供給が期待でき、気候変動に適応した養殖モデルの構築に向けた大きな一歩を踏み出しています。
ベルデアクアの電解ろ過システム
一方で、株式会社ベルデアクアは特許を取得した電解ろ過技術を活用しています。この技術はアンモニアを分解し、水質を安定化させることに加え、病原菌や寄生虫の発生を抑える機能も持っています。バクテリアを使わないため、低水温下でもろ過性能が落ちず、安定した水質を維持できる点が特に優れています。また、臭みの原因となるジオスミンや2-メチルイソボルネオールの発生を抑え、高品質な魚の生産も可能です。
会社のビジョンと未来への展望
Smoltの代表取締役である上野 賢氏は、高温耐性のサクラマスとベルデアクアの技術の融合により、日本の陸上養殖に新しい可能性が開けると確信しています。地域や季節に縛られない養殖モデルの実現を目指しており、この取り組みが水産業の新たなスタンダードになればと願っています。
一方、ベルデアクアの竹廣 洋児氏も持続可能な陸上養殖の重要性を強調しており、新たな方法でのろ過システムの開発を進めています。今後は、需要が高いサーモン類の養殖において、より効率的で質の高い生産モデルを確立していく考えです。
結論
この共同試験は、今後の水産業に革新をもたらすでしょう。両社がそれぞれの技術を駆使して、持続可能で高品質なサーモン養殖モデルを確立することを目指しています。これからの展開に息を飲む想いです。今後も水産業の新しい可能性を追求し、さらなる技術開発に努めてほしいものです。