アールイーが挑む新たなエネルギーモデルの構築
東京都豊島区に本社を構えるアールイー株式会社が、東京都が推進する「GX関連産業創出へ向けた早期社会実装化支援事業」に採択されました。この取り組みは、日常的に発生する未利用資源「排水油泥」を再資源化し、バイオ燃料として生まれ変わらせるプロジェクトです。キーワードは脱炭素社会の実現と地域の資源循環型社会の構築であり、アールイーはその道筋を示そうとしています。
未利用資源「排水油泥」の課題
脱炭素社会の実現に向けた取り組みが進む中、エネルギー自立も重要なテーマとなっています。特に航空や船舶、建設といった輸送分野では、化石燃料からの脱却が急務です。しかし、都市部から排出される「排水油泥」は、これまで衛生や下水インフラへの悪影響を懸念され、産業廃棄物として扱われてきました。実はこの「排水油泥」こそ、再生可能エネルギーの可能性を秘めた未活用資源です。アールイーは、この資源に着目し、積極的に活用していく方針を掲げています。
アールイーの取り組み
アールイーは今まで、食品流通の現場における廃棄ロス削減やサプライチェーン最適化に取り組んできました。新たなプロジェクトでも、現場起点とビッグデータの活用を掛け合わせ、東京都内を中心に排水油泥を回収し、精製し、バイオ燃料FAME(脂肪酸メチルエステル)として再活用します。この取り組みは、既存のインフラと連携しながら実施されるため、コストや負担を抑えつつ、高効率な資源化を目指します。
特に注目されるのは、「完全循環型」事業の実現です。このモデルでは、排水油泥から再生油脂を抽出・精製し、さらに発生する廃グリセリンを洗浄剤やせっけんに変えるというスリートンで進行します。
本事業のスケジュールと期待される成果
この事業の全体計画は5年を予定しており、初期段階から社会実装を意識した設計が進められています。2025年度から2027年度にかけては、排水油泥の特性調査を行い、小規模な実証試験を実施し、実需先への供給準備を進めます。2028年度以降は、量産体制を確立し、航空燃料技術への展開も視野に入れています。
アールイーの代表取締役、今井直樹氏はこの取り組みについて次のように語ります。「私たちは、食品流通の現場での経験を新しいエネルギー領域に応用し、排水油泥という見過ごされがちな資源を活かす挑戦をしています。東京都という大都市でこの実証を開始できることは、地産地消型のエネルギーモデルを普及させる第一歩です。社会実装につながる成果を着実に積み重ねていきたい」との意気込みを見せています。
地域の課題解決に向けて
アールイーの取り組みは、単なるエネルギーの供給だけでなく、地域の課題解決にも寄与します。自治体や事業者、生活者が一体となり、持続可能な循環型社会を作り上げることが求められています。アールイーが手がけるこのプロジェクトが成功すれば、東京都はもちろん、全国規模での資源循環型社会のモデルケースとなる可能性があります。
アールイーが新たに打ち出した「食とエネルギーの循環モデル」は、東京都内での実証を通じて、地域社会の持続可能な未来を築く可能性を秘めています。今後の動向に目が離せません。