サステナブルファッションの新たな可能性、PlaXフィラメント接着芯の誕生
近年、ファッション業界における環境問題への配慮が高まり、一方で新しい素材の開発にも力が注がれています。このたび、Bioworks株式会社と日東紡アドバンテックス株式会社が共同で開発した「ダブルドット接着芯」は、ポリ乳酸(PLA)を原料にした次世代合成繊維「PlaX」を使用した画期的な商品です。本記事では、今回の開発背景や技術的な挑戦、そしてこの新たな素材がもたらす未来について詳しく解説します。
PlaXフィラメント接着芯の特徴と開発過程
双方の企業は2022年から接着芯地の共同開発に取り組み、2024年1月にはPlaXのスパン糸を用いた接着芯の開発に成功しました。そして、今回のフィラメントタイプの開発も具体化し、75デニールのPlaX100%フィラメント芯地が完成しました。
フィラメント開発においては、原料の粘度や紡糸時の繊維の均一性を精密に管理する必要があります。ポリ乳酸などのバイオポリマーは特に熱安定性や粘度の管理が難しいため、高い技術的なハードルをクリアすることが求められました。しかし、Bioworksが独自の開発技術を駆使することで安定した品質を確保することができ、PlaXフィラメントを用いた接着芯の開発が実現したのです。
接着芯は衣類の基布に接着剤を付けて、縫製時に表地に貼り付けることで、生地の補強や形状保持を助ける重要な副資材です。これまで接着芯地には主にポリエステルやポリアミドといった石油由来の素材が用いられてきましたが、PlaXの導入によってファッション業界における環境負荷を大幅に軽減することが期待されています。
環境への配慮とサステナビリティ
PlaXは、サトウキビなどの植物由来の材料から制作されたポリ乳酸を基にしたバイオマス素材であり、最終的には水と二酸化炭素に分解される生分解性を持っています。また、PlaXフィラメントはライフサイクルアセスメント(LCA)分析によって、一般的なポリエステルと比較して約70%のCO2排出削減効果が認められています。これにより、環境に優しい材料として強く支持されています。
さらに、廃棄物から新たに原料と同等のPlaXを再生産する「ケミカルリサイクル」の研究も進行中です。これにより、資源を循環させるクローズドループを実現し、持続可能なファッション産業の実現に向けた一歩を踏み出しています。
デザイン性と実用性の両立
厚みのあるスパンタイプの芯地に比べ、PlaXフィラメントは薄くて軽量であり、デリケートなデザインの衣料品にも最適です。この新しい接着芯が導入されることで、ファッション業界はますます多様性を増し、より洗練された製品を提供することが可能になります。
今後の展望
Bioworksは日東紡アドバンテックスとの提携を強化し、さらなる共同研究を進めていく意向を示しています。環境に優しい副資材の開発は、ファッション業界における脱炭素化や資源循環への貢献に大きな役割を果たすと期待されています。
このように、PlaXフィラメント接着芯の誕生は、ただの素材の置き換えにとどまらず、環境意識の高まりに応じた新たなファッションのスタンダードの確立へとつながることでしょう。今後の展開から目が離せません。