キリンが描く新たなコーヒーの未来
青春やふれあいを象徴する飲料、コーヒー。その原材料であるコーヒーチェリーの活用が進むなか、キリンホールディングス株式会社が画期的な発酵素材の開発に成功しました。この新素材は、飲みごたえと香味を高める特性を持ち、コーヒー農園の持続性向上にも寄与することを目指しています。
1. 開発の背景と目的
コーヒーチェリーは、砂糖が含まれる果肉や果皮が多く余っているため、廃棄される量が非常に多いのが実情です。実際、これらの廃棄物にはカフェインやポリフェノールなどが豊富に含まれており、環境への負荷を考えると非常にもったいない話です。特にコロンビアでは、コーヒーチェリーの廃棄に対して環境税が課せられることが多く、農園の経済的負担が増加する要因となっています。
そのため、キリンは2018年からこの活動を強化し、「廃棄物を価値ある資源に変える」ことを目指して研究を進めてきました。生態系への配慮と、農園の収入向上という二つの側面からのアプローチが求められています。
2. 発酵素材の開発内容
キリンの飲料未来研究所が開発した発酵素材は、コーヒーチェリーの果肉と果皮から作られるエキスを乳酸菌と酵母で発酵させたものです。この素材は、さまざまなタイプの飲料に対して「温感」「発酵感」「アルコール感」を増強する特性を持っています。
特に注目なのは、RTD(レディートゥドリンク)商品への採用です。「麒麟特製」シリーズにこの新素材が使われることで、消費者の満足感と上質感が向上するという結果が得られました。2025年5月には「麒麟特製 メロンソーダサワー」、11月には「麒麟特製 みかんサイダーサワー」が発売予定です。
また、ノンアルコール飲料を使用した調査からは、飲みごたえや香味の向上が示唆され、低アルコール飲料としての価値も期待されています。
3. 未来の展望
キリンは今後、廃棄されるコーヒーチェリーを有効活用し、その使用量を拡大させたいと考えています。これにより、コーヒー農園の収入向上を図りつつ、環境負荷の軽減にも寄与していく狙いです。また、社会的課題解決として、アルコール度数の低い飲料への採用を模索していく予定です。
4. 開発者の思い
飲料未来研究所の辻さや香は、「この開発を通じて、酒類の有害摂取を減らすことや環境問題の解決に寄与したい」と強い思いを持っています。
終わりに
キリンホールディングスは、持続可能な社会を築くために、自然環境へポジティブな影響を与える取り組みを続けています。この先、コーヒーチェリーの新たな価値創造によって、製品が私たちの生活にどのように貢献していくのか、楽しみですね。