キリンと東京大学が開発した老化抑制素材の新たな可能性
老化は近年、特に超高齢社会が進む中で、ますます注目される研究テーマです。その中で、キリンホールディングス株式会社と東京大学が共同で実施した研究が、革新的な結果をもたらしました。この研究は、世界初となる
ヒトiPS細胞由来小腸オルガノイドを使用し、老化抑制に有効な素材の検証に成功したというものです。
研究の背景
2022年からスタートしたこのプロジェクトは、老化の中でも特に「腸の老化」に焦点を当てています。腸は免疫や栄養吸収など、多くの生命活動に関わる重要な臓器です。しかし、その老化は評価が難しく、従来の技術では十分に解明されてきませんでした。そこで、キリンと東京大学は小腸オルガノイドのモデルを構築しました。
ヒトiPS細胞由来小腸オルガノイドの特徴
小腸オルガノイドは、腸の幹細胞をもとにした細胞集団であり、実際の小腸に似た構造や機能を持っています。これは、腸の健康に関する新たな実験モデルとしての価値があります。このオルガノイドを用いて、老化現象の一つである細胞の老化、炎症反応、バリア機能の低下などを再現することに成功しました。
シスプラチンによる細胞老化の誘導
研究チームは、
シスプラチンという薬剤を使用して小腸オルガノイドを処理し、細胞老化を誘導しました。この過程では、老化の指標となるSA β-gal染色によって、老化が促進された細胞の数が増加したと報告されています。有望な結果に期待が高まります。
HMOによる効果の確認
さらに、研究の中で
ヒトミルクオリゴ糖(HMO)が老化抑制に効果的であることが確認されました。HMOを与えたモデルでは、細胞老化や炎症関連の遺伝子発現が抑制され、老化の進行が有意に改善されたのです。この結果は、腸の炎症の軽減やバリア機能改善にも寄与する可能性を示しています。
期待される影響
この画期的な研究成果は、腸の老化に対する新たなアプローチを提供します。腸の健康が健康長寿に与える影響が大きいことから、この研究を通じて、老化防止や健康維持に向けた新しい戦略が実現することが期待されます。
最後に
キリングループは「食と健康」をキーワードに、新しい価値を提供し続けています。これからも腸の健康を含む多くの分野での研究が進み、さらなる発見が待たれています。2025年の「日本農芸化学会」における成果発表も楽しみです。腸の健康がもたらす未来を、一緒に見守りましょう。