ロレアルと日光ケミカルズの共同研究が明らかにした皮膚常在菌の洗浄機構
最近、世界有数の化粧品会社であるロレアルグループの日本における研究拠点、ロレアル リサーチ&イノベーション ジャパン(R&Iジャパン)が日光ケミカルズと共同で行った研究成果が発表されました。この研究では、皮膚常在菌が形成するバイオフィルムの新しい洗浄メカニズムに焦点を当て、2025年9月に行われる二つの学会で詳細が共有される予定です。
バイオフィルムとは、微生物が自身の分泌物によって固体表面に形成する強固な構造で、アトピー性皮膚炎やにきびなどの皮膚疾患の原因となる可能性があります。そのため、バイオフィルムの除去が皮膚の健康には欠かせないとされています。しかし、バイオフィルムは多様な微生物が共生しており、その除去は非常に難しいのが現状です。
研究の流れと方法
ロレアルR&Iジャパンと日光ケミカルズの研究チームは、シリカ基板上に皮膚に常在するアクネ菌が作るバイオフィルムを形成し、特定の洗浄液を用いてその洗浄能力を評価しました。洗浄液は、せん断流を使って基板に平行に流され、残存するバイオフィルムの量を水晶振動子マイクロバランス(QCD-M)で測定しました。
実験の結果、単に浸漬するだけではバイオフィルムは剥がれなかったのに対し、せん断流を加えることでイオン性合成界面活性剤であるドデシル硫酸ナトリウム(SDS)やバイオサーファクタントのラムノリピド(RL)の洗浄液がバイオフィルムを効果的に剥がすことができることが分かりました。特に、流速が20ml/sに達すると、ほぼ完全にバイオフィルムが除去されることが確認されました。
一方で、ポリオキシエチレンソルビタンモノドデカノエート(Tween 20)などの非イオン性界面活性剤では、流速によらずほとんど効果が見られませんでした。これは、各界面活性剤の構造がバイオフィルムの除去効率に大きく影響していることを示唆しています。
リン脂質の役割
さらに、皮膚常在菌として知られる黄色ブドウ球菌のバイオフィルムを、リン脂質で被覆した基板上に形成しました。この実験では、リン脂質の量が増えることで洗浄効率が高まることが分かりました。これは、リン脂質膜がバイオフィルムの除去を促進する役割を果たす可能性があることを示しています。これにより、リン脂質を基にした新しいスキンケア製品の開発につながることが期待されています。
まとめ
この研究は、洗浄力のメカニズムを理解する上で重要な一歩であり、今後のスキンケア製品に革新をもたらす可能性があります。ロレアルリサーチ&イノベーションジャパンは、1983年にスタートし、現在も日本の文化や社会に合わせた製品開発を行っており、さまざまなスキンケアブランドを展開しています。今後も新たな美容技術や商品の誕生が楽しみです。