ASTRA FOOD PLANがICC KYOTO 2025で優勝
埼玉県富士見市に本社を置くフードテックスタートアップ、ASTRA FOOD PLAN株式会社が2025年9月2日に開催された「Industry Co‑Creation(ICC)サミット KYOTO 2025」の中で行われた「スタートアップ・カタパルトピッチコンテスト」において、見事優勝を果たしました。
ICC KYOTO 2025とスタートアップ・カタパルトの概要
「ICC KYOTO 2025」は、「ともに学び、ともに産業を創る」をテーマにした、日本最大級のビジネスカンファレンスです。約1,200名の参加者と500名以上の登壇者が集まり、産業界の未来を語る重要な場となっています。
その中でも特に注目を集めるのが「スタートアップ・カタパルト」です。このプログラムは、スタートアップ企業が自社のビジネスプランを7分間でプレゼンする機会を提供し、投資家や大企業との新たなビジネスチャンスを生むものです。
ASTRA FOOD PLANのピッチ内容
代表取締役社長の加納千裕氏は、初のプレゼンターとして登壇。29名の審査員による投票で26点を獲得し、見事優勝に輝きました。彼のプレゼンテーションでは、食品業界における「かくれフードロス」という大きな問題が取り上げられ、年間2,000万トン以上のフードロスが生産・加工過程で発生している事実が提示されました。この隠れた廃棄物問題は、十分に認知されていないにもかかわらず、コストの負担となっていることが指摘されました。
独自技術「過熱蒸煎機」の導入
ASTRA FOOD PLANが開発した「過熱蒸煎機」は、食品を約10秒で乾燥・殺菌できる装置です。この画期的な装置は、400℃の過熱水蒸気と熱風を利用し、高コストな廃棄処分を回避できます。また、フリーズドライと比較しても圧倒的にスピーディーで、栄養価や香りを保つことが可能です。
吉野家ホールディングスとの事例
加納氏は、吉野家ホールディングスでの導入事例を示しました。同社の工場では、年間250トンものタマネギの端材が廃棄されていましたが、過熱蒸煎機を使用することでそれをすべてパウダー化し、栄養価の高いアップサイクル製品へと変貌させました。これにより、廃棄コストを削減しつつ、収益化を実現したのです。
製品「ぐるりこ®」の展開
「ぐるりこ®」は、ASTRA FOOD PLANが開発したアップサイクルパウダーで、循環を意味する「ぐるり」と粉の「こ」を組み合わせたブランド名です。この製品は、香りと栄養価が特に高く、家庭用と業務用の両方で利用されています。例えば、クラフトビールの「VERTERE」と共同開発したホップのしぼりかすを利用した「アップサイクルホップビール」が好評を得ています。プレゼンテーションでは、審査員に「タマネギぐるりこ」を振る舞い、その芳醇な香りが会場全体に広がり、参加者から驚きの声が上がりました。これは、通常のオニオンパウダーの135倍の香り濃度を誇るとされています。
フード&ドリンクアワードでの成功
ASTRA FOOD PLANは、ICC KYOTO 2025の「フード&ドリンクアワード」においても注目され、総合3位を受賞し、サステナビリティ部門では1位を獲得しました。このプログラムには18社が参加し、厳しい審査を通過した結果、同社の「ぐるりこ」が各観点から評価されました。
最後に
ASTRA FOOD PLANは、ただの食品企業ではなく、持続可能な社会の実現を目指す意欲的なスタートアップです。彼らの取り組みは、フードロスの問題解決に寄与するだけでなく、環境にも優しい循環型社会を実現する一助となることでしょう。今後の展開から目が離せません。