母乳の成分と食物アレルギーの関連性研究が進む最新報告
近年、食物アレルギーの患者数は増加の一途を辿っています。その中で、新たに注目されているのが授乳期における母乳の成分とアレルギー発症の関連性です。雪印ビーンスターク株式会社と雪印メグミルク株式会社が共同で進めている研究が、2025年6月21日から開催される第24回新生児栄養フォーラムで発表されます。この研究は、母乳の成分がどのようにして食物アレルギーに影響を与えるかを明らかにしようとするもので、成果が期待されています。
食物アレルギーの発症と母乳のつながり
食物アレルギーは多くの場合、3歳までの小児に発症し、その半数が生後12か月以内に診断されています。したがって、母乳がどのようにアレルギーの要因に関与するのかは非常に重要なテーマとなっています。これまでの研究では、母乳がアレルギーを抑制する可能性が指摘されているものの、具体的な結論には至っていません。今回は、母乳中の成分の中でも特にアレルギーに抑制的な働きを持つ成分に着目し、研究成果が発表される予定です。
近年の研究が示す母乳成分の変化
ビタミンDの経年変化
近年、ビタミンDが食物アレルギーの発症に影響を与えることが報告されています。ビタミンDは日光を浴びることで合成されますが、現代社会では日焼けを避ける傾向が強く、母乳中のビタミンD濃度が低下している可能性があります。実際に、母乳中のビタミンD濃度を30年前と比較したところ、現代の母乳では低下が見られました。さらに、季節や日照時間がビタミンDの濃度に大きく影響することも明らかになっています。
DHAの影響とサプリメント
DHAは免疫バランスを整える成分として知られています。魚に豊富に含まれるこの成分ですが、日本人の魚介類の摂取量は減少しており、母乳中のDHA濃度も過去と比べて低いとされています。しかし、DHAサプリメントを日常的に摂取している授乳婦は、母乳中のDHA濃度が増加することが確認されました。DHAの摂取がアレルギー抑制に貢献する可能性があることが示されています。
乳酸菌の摂取とTGF-β
TGF-βは過剰な免疫反応を抑える役割を持ち、アレルギーの発症を抑えると考えられています。母乳中のTGF-β濃度は、乳酸菌などのプロバイオティクスの摂取によって変動することが明らかになっています。今回の研究で、授乳婦が特定の乳酸菌を摂取することで、母乳中のTGF-β濃度が増加することが示されました。これにより、アレルギーのリスク低減が期待されます。
今後の展望
雪印ビーンスタークは、母乳を中心とした乳幼児の栄養学の研究をさらに進めて、食物アレルギーの予防や発症リスクの低減に向けた取り組みを続けていきます。医療機関や研究機関と連携し、母乳中の免疫成分や栄養素、母子の生活環境を加えた包括的な調査を持続的に行い、得られた成果を粉ミルクやママ向けサプリメントの製品開発に活かすことを目指しています。これにより、赤ちゃんとママが共に安心して過ごせる未来を支える取り組みを推進していく所存です。
発表概要
- - 演題名: 母乳成分と食物アレルギーとの関連
- - 発表者: 安枝武彦(雪印ビーンスターク株式会社 商品開発部)
- - 発表日: 2025年6月21日(土)、22日(日)
- - 会場: 浅草橋ヒューリックホール(東京都台東区浅草橋)
この研究の成果が、家庭や医療現場においてどのような影響をもたらすのか、今後の展開に期待が寄せられています。