LVMH メティエダール第9回アーティスト・イン・レジデンスでの米澤柊新作発表

LVMH メティエダールの新プロジェクト

LVMH メティエダールが2025年9月9日、アーティスト・イン・レジデンス制度の一環として、日本の新進アーティスト、米澤柊氏の新作群『光の傷』を発表しました。本プロジェクトは、アニメーションやマルチメディアの分野で活躍する米澤氏が、岡山県井原市にあるデニム生地製造業者、クロキ株式会社を拠点にし、6ヶ月間にわたる創作活動を経て生まれたものです。

特別公開イベント

この作品群は、井原市のクロキ株式会社本社にて9月9日にプレビューされ、その翌日には地元市民にも公開される予定です。さらに、2025年10月にはフランス・パリで展覧会が開催され、国際的な舞台でもお披露目されることになっています。これも、LVMHが新進アーティストの育成と伝統工芸への革新的なアプローチを支援している証です。

米澤柊氏の創作過程

米澤氏は、藍糸の染色やヴィンテージシャトル織機による織布等、クロキの職人技に触れながら、地域の自然環境や水資源など、土地固有の要素からインスピレーションを受けて作品を制作しました。特に、井原の美星天文台での惑星の整列や、瀬戸内海でのクラゲとの出会いが彼の創作に強い影響を与えたといいます。

デニムと傷の再解釈

特に米澤氏が注目したのは、デニムのダメージ加工技術の進化です。過去にはデニムの“傷”が着る人の人生の痕跡を表していたのに対し、今日ではコンピュータやレーザーでの複製が一般的になっています。この変化を深く考察した米澤氏は、これらのプロセスを『再生産されていても新たな表情が生まれるメディウム』として再解釈しました。

デニムの「光の傷」

『光の傷』というタイトルについても、作品を通して鑑賞者が個人的な記憶や出会いを思い起こし、その光の痕跡を「存在の証」として感じることを目指していると述べています。米澤氏は今回のレジデンスについて、「この6ヶ月間は新しい視点を得る貴重な経験でした。デニムを通じて聴こえてくる工場の音や環境音は、作品と一体化し、私の表現の幅を広げてくれました」と語っています。

LVMHの支援とアート界への影響

LVMHとクロキ株式会社の支援を受けた今回のレジデンスは、日本の伝統的なクラフツマンシップと現代アートが融合する機会としても位置付けられています。LVMHメティエダールの創設者であるジャン＝バティスト・ヴォワザン氏も「米澤氏の革新的なアプローチによってデニムが芸術として昇華されたことを誇りに思います」とコメントしています。