役替わり朗読劇『5years after』-ver.13- レポート
2025年2月11日、東京・赤坂レッドシアターで開幕した役替わり朗読劇『5years after』-ver.13-。堤泰之が作・演出を手掛け、約60役を3人の役者が演じる何ともユニークな舞台。
物語の概要
本作の主人公は、ミュージシャンとしての夢を抱く大学生・水川啓人です。彼の人生のうねりを、20歳、25歳、30歳の姿を通して3人の役者が交代で演じていきます。初日公演では、高田翔が20歳、結城伽寿也が25歳、本間一稀が30歳の啓人を担当しました。
この朗読劇には特別なルールがあり、「台本から目を離さない」「椅子から立たない」という制約のもと、役者たちは体の動きや声の使い方を工夫して、キャラクターを表現します。この制限が故に、3人は瞬時に約60のキャラクターを演じ分け、観客に独自の演出を提供しました。
役者の個性が映し出す啓人
20歳の啓人を演じた高田の柔らかい声は、悩みを抱える等身大の大学生を見事に表現。次に登場した結城は、25歳の啓人に活気と成長を感じさせ、声質の違いから生むダイナミックさが際立ちました。そして、30歳の啓人を演じた本間は、軽やかさと共に運命に翻弄される姿を描き出しました。観客は、役者の声によって作中に描かれない啓人の成長を想像することができ、心に響く体験を得たでしょう。
キャラクターの魅力
啓人以外のキャラクターたちも見逃せません。3人で演じる5人の会話はテンポ良く進行し、観客を笑わせ、感情を揺さぶる場面が展開されました。特に啓人の彼女が登場するシーンでは、個性的なキャラクターの言動が観客の笑いを誘う場面がありました。
反省会『3actors talk』の裏話
本編の後には『3actors talk』というアフタートークが行われ、役者たちの本番中の心境や印象的なキャラクター誕生秘話が明かされました。緊張から高田が噛んでしまった話や、役作りに対する各々の視点がシェアされ、温かい雰囲気の中で進行しました。
高田は「オタク風の社長」や「若いバーテンダー」のキャラクター作りについて語り、観客を引き込むことに成功。結城は、自身の幼少期や家族の話を披露し、会場は和やかな笑いに包まれました。
まとめ
演劇界では「舞台は生もの」とよく言われますが、今回の『5years after』はまさにその言葉が実感できる作品です。異なるキャストによる初演は、同じ物語でも毎回新たな体感を与えてくれます。45分の中で表現された「enjoy your life!」というメッセージも、観客の心に響くものがありました。
新生活が始まる春、その前に『5years after』を観劇して、自分自身の「楽しい人生」を見つめ直す機会にしてみてはいかがでしょうか。