酒さと皮膚常在菌の新たな関係性を探る
近年、肌の健康に関する研究が進む中で、特に注目されているのが「酒さ」です。酒さとは、額や鼻、頬に赤みや刺激感、ほてりを引き起こす慢性的な皮膚の炎症疾患です。重症でない場合には「赤ら顔」として知られ、多くの人々に影響を与えています。今回、日本メナード化粧品株式会社と藤田医科大学 ばんたね病院の共同研究によって、酒さと皮膚常在菌の関係が新たに明らかになる結果が得られました。
酒さと皮膚常在菌の関係
これまでの研究で、酒さの発症や慢性化には皮膚常在菌が関与していると考えられてきましたが、その詳細は明らかになっていませんでした。そこで、研究チームは酒さ患者と健常者の皮膚常在菌叢を分析し、酒さ患者の皮膚において「レンサ球菌」と呼ばれる菌の割合が高いことを発見しました。レンサ球菌は通常、健常な皮膚には少数しか存在しないことが知られているため、この結果は非常に興味深いものです。
研究方法と結果
研究は、酒さ患者19名と健常人12名を対象に行われました。サンプリングには綿棒を使用し、次世代シーケンサーを使用して皮膚常在菌の解析を実施しました。結果として、酒さ患者の皮膚常在菌叢にはレンサ球菌の割合が多く見られ、これが皮膚常在菌の乱れ、すなわち「ディスバイオーシス」と呼ばれる状態によるものと考えられます。
さらに、同じ被験者から得た皮膚常在菌のDNAをPCR法で分析することで、健常人ではほとんど検出されなかったレンサ球菌が、酒さ患者では多く確認されたことが分かりました。このことから、皮膚常在菌のバランスが崩れることで酒さの症状が生じる可能性が示唆されています。
今後の展望と研究の意義
この研究によって、酒さ患者における皮膚常在菌の状態が明らかになったことは非常に重要です。今後は、この知見を基に、酒さの慢性化メカニズムを解明し、顔の赤みを改善するための新たなアプローチの開発が期待されています。化粧品業界でも、これらの研究結果を取り入れることで、より効果的なスキンケア製品の開発が進むことでしょう。
この研究は2025年7月に東京で開催される第50回日本香粧品学会学術大会において発表される予定です。私たちの美肌への道が、ますます明るくなることを期待したいですね。