血中アルブミン酸化還元バランスと中高年の身体機能
近年、森永乳業と順天堂大学の共同研究により、血中アルブミン酸化還元バランスが中高年齢者の身体機能における変化を示す有効な指標である可能性が明らかになりました。この研究成果は、国際学会NUTRITION 2025で発表され、学術雑誌『Frontiers in Physiology』にも掲載されました。
研究の背景と目的
加齢に伴う身体機能の低下を予防するためには、適切な運動と栄養が不可欠です。特に、血中に存在するアルブミンはその豊富さから栄養状態を示す指標として利用されてきました。しかしながら、近年の研究では、アルブミン酸化還元バランスがその濃度よりも敏感に栄養状態を反映することがわかってきたのです。
本研究では、中高年齢者における血中アルブミン酸化還元バランスと運動効果との関係を探ることを目的に実施されました。これは、特に運動による身体機能の改善に対する新たな見解を提供するものです。
研究方法
順天堂大学では、ロコモティブシンドローム(運動器疾患による移動機能の低下)の予防と改善へ向けて、効果的な運動プログラムの開発を進めてきました。この研究では、12週間にわたる運動プログラムに参加した40代から80代の中高年齢者43名のデータを用い、運動前後の身体機能(特に歩行速度)と血中タンパク質の状態を分析しました。
研究に使用した指標
- - 血中アルブミン酸化還元バランス
- - アルブミン濃度
- - 総たんぱく質濃度
- - 遊離アミノ酸濃度
主な研究結果
研究結果において注目すべきは、血中アルブミン酸化還元バランスにおいて還元型アルブミンの割合が高いと、歩行速度が速い傾向にあるということです。トレーニング前後のデータ分析から、還元型アルブミンの割合が増加した参加者は、最大歩行速度の改善幅が大きいことが示されました。これにより、アルブミン酸化還元バランスは中高年の身体機能を示す新たな指標としての可能性を持つことが示唆されました。
今後の展望
加齢による身体機能の低下は、「フレイル」や「サルコペニア」といった状態を引き起こし、転倒や介護のリスクを高める可能性があります。血中アルブミン酸化還元バランスを活用すれば、これらのリスクを予防する新しい指標として、栄養と運動の観点から健康を管理する助けとなるでしょう。これからは、この指標を用いた中高年者への健康状態評価や栄養指導の実施に向けた研究が進められる予定です。
この研究は、中高年年代の健康管理に向けた重要な一歩となり、私たちのライフスタイルに役立つ情報をもたらしてくれます。今後の研究に期待しましょう。