花王が解明したウイルス不活化メカニズムとは？BACの役割と環境への影響

ウイルス不活化の新たな知見

花王株式会社と山形大学が共同で行った研究は、塩化アルキルベンザルコニウム（BAC）がエンベロープウイルスに対して持つ不活化効果のメカニズムについてのもので、2025年3月28日付で「Scientific Reports」にて発表されました。この研究結果は、BACの適切な使用が、衛生製品の開発において重要であることを示しています。

BACとは何か？

BACは、エタノールを使用せずに効果的にウイルスを不活化できる界面活性剤です。消毒剤など、さまざまな衛生製品に利用されており、その安全性と効果が注目されています。しかし、エンベロープウイルスに対する具体的な作用メカニズムは長らく不明のままでした。

研究の背景

新型コロナウイルス感染症の影響で、BACの使用は急増し、その人や環境に対する影響が議論されるようになりました。このような背景の中、花王の研究者たちは、BACがウイルスにどのように作用するのかを詳しく調査しようとしました。従来は各研究機関によって様々な報告がありましたが、明確なメカニズムを解明することで、一貫した理解が得られることが期待されました。

研究の成果

研究者たちは、BACの作用において非常に重要な「Critical Micelle Concentration（CMC）」に注目しました。この濃度は、BACが水溶液中でその性質が劇的に変化するポイントです。実験の結果、CMCの前後でウイルスに対するBACの効果が異なることがわかりました。特に、CMCを超えるとウイルスが完全に崩壊し、急激に不活化効果が高まることが確認されました。

この情報は、製品設計やウイルス不活化試験の条件設定にとって、非常に重要であると言えるでしょう。BACの使用条件を詳しく理解することで、より効果的かつ安全な製品開発が可能になります。