味の素とForge Biologicsが手を組み、遺伝子治療薬の新たな時代を切り開く
味の素株式会社は、米国のForge Biologics社との協力を通じて、遺伝子治療薬の製造における生産効率を大幅に向上させるための培地用サプリメントを開発しました。この成果は、今後の医療における可能性を広げる重要なステップと位置付けられています。
遺伝子治療薬の背景
遺伝子治療とは、疾患の根本原因を遺伝子にアプローチして治療する新しい医療技術です。この方法では、従来の治療法では対応が難しい疾患に対して、遺伝子を改変または追加することで治療効果を狙います。近年、この分野の市場は急成長を続けており、2022年には約70億米ドル(1兆150億円)の市場規模が、2030年には460億米ドル(約6兆6,700億円)に達すると予測されています。
この成長を背景に、生産性の向上と製造コストの削減が業界の大きな課題とされています。
Forge Biologics社の役割
2023年に味の素グループに加わったForge Biologics社は、遺伝子治療薬の開発を手掛けるCDMO(開発・製造受託会社)として、高純度かつ高性能のアデノ随伴ウィルス(AAVベクター)やプラスミドDNAの生産能力を有しています。同社は世界最大規模の生産設備を整え、様々な疾患に対応した治療薬の前臨床試験から臨床試験までを支える体制が整っています。
サプリメントの開発
今回、味の素とForge Biologicsが共同開発した培地用サプリメントは、ウィルスベクターの生産性を従来の約2倍まで引き上げることが確認されています。この成果は、培地に特定の栄養素を添加することで実現されました。適切な栄養を供給することにより、細胞の培養が高効率化され、製品の品質向上にも寄与することが期待されています。
このサプリメントの研究結果は、2025年に日本遺伝子細胞治療学会で発表される予定で、商品の一般販売も視野に入れています。
2030年に向けた展望
味の素グループは2030年に向けて、遺伝子治療や細胞治療のジャンルに力を入れており、製造プロセスの革新に着手しています。さらなるシナジーを生み出し、ヘルスケア分野での事業強化と新たな製品開発を進めていく方針です。この取り組みは、アミノサイエンスを基にした高品質な製品とサービスの提供に直結しています。
まとめ
今回のサプリメント開発は、遺伝子治療薬の生産において大きな進展をもたらすものと期待されています。味の素とForge Biologicsの連携による技術革新が、将来の医療にどう影響を及ぼすのか、今後の展開に注目です。