母乳中のポリアミンとアレルギーリスクの関連性
近年、母乳中の成分が子どもの健康に与える影響について注目されており、雪印ビーンスターク株式会社と雪印メグミルク株式会社が共同で実施した第3回全国母乳調査の成果が、新たな知見を提供しています。研究では、母乳中のポリアミンが子どもの食物アレルギー発症リスクに与える影響について詳しく調査しました。
研究の背景と目的
本調査は2015年から開始され、全国の母親から提供された母乳試料を元に、母乳中の成分と母親の生活習慣、さらには子どもの成長・発達との関連を解明することを目的としています。特にフォーカスが当たったのが、母乳中のポリアミンという成分です。
ポリアミンとは?
ポリアミンは、細胞の成長や免疫調節に関わる重要な生体成分であり、最近では老化制御に関する研究も進んでいます。このポリアミンは母乳にも含まれており、乳児の消化管の成熟や免疫機能の発達を促す役割があるとされています。しかし、実際に母乳のポリアミンがどのように乳児に影響するかについては十分な研究がなされていませんでした。
研究結果の概要
研究の結果、母乳中のポリアミン濃度は産後の経過と共に低下し、特に産後11~12か月では、産後1~2か月と比較して36%も減少することが分かりました。また、ポリアミンの濃度が高い母乳を摂取していた乳児は、3歳までの食物アレルギー発症リスクが有意に低下することが判明しました。具体的には、アレルギーを発症しなかった乳児の母乳中ポリアミン濃度は、相対的に24%高かったとされています。
図から見る詳細
研究データの分析結果を示す図を以下に紹介しています。
- - 図1では、食物アレルギーを発症した群と発症しなかった群における母乳中ポリアミン濃度の比較がなされており、発症しなかった群の母乳には有意に高いポリアミン濃度が認められました。
- - 図2では、多重ロジスティック回帰分析により、ポリアミン濃度が高い母乳を哺乳した乳児ほどアレルギー発症のオッズ比が低下することが示されています。
- - 図3では、産後の経過に伴うポリアミン濃度の変化が示されており、時間と共に減少するトレンドが見受けられました。
今後の展望
本調査の成果は、母乳の質を向上させ、乳児の健康を守るための重要な情報を提供しています。今後も母乳中の成分と母親の生活習慣、さらには子どもたちの発達にも注目し、さらなる研究を進めていく予定です。発表は2025年5月23日から名古屋大学で開催される第79回日本栄養・食糧学会大会にて行われ、より広い議論が期待されます。
まとめ
この研究結果は、母親たちにとって、母乳の重要性を再確認する機会となるでしょう。ポリアミンが持つ可能性を理解することで、未来の世代の健康を支える新たなアプローチが見えてくるかもしれません。雪印ビーンスタークによる母乳研究は、今後も続くことでしょう。