毛周期研究の新展開
2025-09-05 14:42:24

人間の毛周期における皮膚組織再構築メカニズムの解明

ヒト毛周期における皮膚組織再構築メカニズムの解明



ポーラ化成工業株式会社フロンティアリサーチセンターと理化学研究所(理研)の共同研究チームが、ヒトの毛周期に伴う皮膚組織の再構築に関わる分子・細胞メカニズムを解明しました。この成果は、組織の再生医療や毛周期関連の疾患治療において、新たな可能性を示しており、非常に意義深いものとなっています。

毛周期の重要性と研究背景



ヒトの毛周期は、休止期、成長期、退行期からなる一連のサイクルで進行し、皮膚の毛包が周期的に再生することが特徴です。この毛包は、ほ乳類の成体にとって数少ない再生器官の一つであり、心身の健康にも影響を与えます。しかし、その詳細なメカニズムは未解明でした。従来の研究は部分的な時点にしか焦点を当てておらず、全体の変化を把握することが困難でした。

研究手法



この研究では、毛包を一つだけ含むヒト由来の微小皮膚片(単毛サンプル)19個から、1細胞遺伝子発現データを取得しました。各サンプルは毛周期中の異なる時点を表していると考えられますが、取得時にはその時点は不明でした。研究者たちは、遺伝子発現パターンを比較し、毛周期の時間軸を模した「疑似毛周期」を構築しました。

得られた成果



毛周期の各フェーズ



疑似毛周期に沿った分析を進める中で、皮膚組織がどのように再構築されていくのかを詳細に観察しました。研究により、皮膚では特に退行期において細胞外マトリックス(ECM)の分解と再構築が行われていることが示されました。このことは、毛包が退縮する過程で細胞間のコミュニケーションが活性化していることを示唆しています。

具体的には、毛包角化細胞や周囲の細胞間での分泌因子の相互作用が、細胞の動的変化に大きく寄与していることが明らかになりました。特に退行期では、細胞間のシグナル伝達が活発で、細胞の再建に重要な役割を果たすことがわかりました。

重要な細胞種の特定



また、研究により、退行期における皮膚の再構築を担う細胞として、毛包周囲の線維芽細胞、血管内皮細胞、白血球が特定されました。これらの細胞がどのように作用して皮膚組織を再整備するのかを追跡することで、今後の再生医療や脱毛症治療法の開発に基盤となる知見が得られました。

今後の展望



今回の成果は、毛周期や他の周期的な生理現象を理解するための技術基盤を提供し、サンプルのステージを事前に識別することが難しい生体現象においても効果的です。

皮膚組織の再生と再構築のメカニズムを詳細に可視化することで、毛周期関連疾患の原因に迫る新しいアプローチを実現すると期待されています。最終的には、これらの研究結果が脱毛症治療や再生医療の革新に繋がることを願っています。

研究の概要



この研究成果は、科学雑誌『Cell Reports』2025年8月28日号に掲載されました。発表した研究チームのメンバーは、ポーラ化成工業の横田絢副主任研究員をはじめ、理化学研究所の藤原裕展チームディレクターなど、専門家が集結したチームです。今後の研究進展に注目が集まります。


画像1

画像2

画像3

画像4

画像5

画像6

画像7

画像8

画像9

関連リンク

サードペディア百科事典: ポーラ化成 理化学研究所 毛周期

トピックス(ビューティ)

【記事の利用について】

タイトルと記事文章は、記事のあるページにリンクを張っていただければ、無料で利用できます。
※画像は、利用できませんのでご注意ください。

【リンクついて】

リンクフリーです。